「鋼構造」の意味をご存じでしょうか。
鋼構造は建築工学における学問名称の1つで、建物構造の名称です。
似た用語に、鉄骨構造という言葉があります。
また、これまで勉強してきた構造力学と、鋼構造はどのような関係にあるのでしょうか。
鋼構造ってなに?
鋼構造とは、建物構造の1つです。案外、初めて聞いた人も多いかと思います。
なぜなら、実務や世間的には鋼構造よりも鉄骨構造が一般的だからです。
どちらも間違いではないのですが、鉄骨の「鉄」という文字は相応しくありません。
鉄骨構造で使われている材料は、「鋼」だからです。
その一方で、「鉄骨」という名称が世間や建築実務の世界で広まっているので、
未だに「鉄骨造や鉄骨構造」という言葉が使われています。
鋼構造を勉強する、たった1つの理由
以上、当サイトでは鋼構造の学習全般が網羅できるように整理してあります。
では、なぜ鋼構造を勉強する必要があるのでしょう。
これまで習ってきた構造力学、材料力学の知識で対応できないのでしょうか。
答えは、「できません」。
なぜなら鋼構造では、現実に用いる柱や梁、小梁、ブレース、柱脚など、
これまで構造力学では勉強しなかった「実際の構造材」に対して、構造的検討を行います。
構造力学では、既にモデル化された部材、境界条件、荷重など、空想上のモデルを元に計算をしてきました。
鋼構造では、それからステップアップして実際に部材の断面を決定することや、
これまで与えられていた「荷重や境界条件」から決めていきます。
この、「実際の部材を決める計算過程」が鋼構造の学問分野の1つです。
さらに鋼材の機械的性質や、柱脚、継手、接合部、
ダイアフラムなど細かな鋼部材を決定する点も、鋼構造ならではです。
鋼構造と構造力学の関係
以上のように、鋼構造と構造力学は下記の関係にあります。
例えば構造力学を理解するために、数学の知識が必要なように、
鋼構造を理解するには構造力学の知識が必須となります。
鋼は、本当は重い鋼材?
意外と誤解されやすいのが、鋼材は「軽い」というイメージです。
実は、素材単体で比較した場合、鋼材は「重い」材料なのです。
では、なぜ鋼材は軽い材料としてイメージされるのでしょうか?
鋼材は高強度で高剛性を持つ材料です。
素材単体で比較した場合、剛性と強度面では、RCとは比較にもなりません。
例えば、ヤング係数はRC材と鋼材で1ケタ違います。
その一方で、鋼材の重量はRC材の3倍以上あります。
さて、部材の耐力は断面係数と強度、変形に対しては断面二次モーメントとヤング係数が高いほど良いですね。
この観点から考えれば、鋼材の方が、強度とヤング係数共に1ケタも高いので、有利な材料です。
つまり、同スパンで同じ荷重が作用した場合、鋼材を使用したほうが断面を小さくできるのです。
断面を小さくできるということは、結果として重量は軽くなります。
一方、RCが鋼材と同じ断面性能を必要とした場合、1ケタ強度や剛性が違うということは、
それだけでも10倍重量が違ってきますから、鋼材は重いけど鋼構造は軽い建築物と言えるのでしょう。
又、鋼材は原価がRCと比べても高いので、経済的な設計を行うためにも鋼材量は減らした方がお得です。
高強度、高剛性だから部材を細くできる!・・・本当にそれで大丈夫??
鋼材自体は重い材料だけど、高い強度と剛性を持つことから部材断面を小さくできて、
結果として軽量な材料であることがわかりました。
ややこしいので、今後は鋼材=軽量という認識で進めたいと思います。
鋼材の断面を小さくできることに気づきました。
でも、本当にこれで大丈夫でしょうか?人間の直観で、どこか危ういのではないか?そんな風に思いませんか??
人間の危ういという直観を信じましょう。
思ったより細い断面にできたとしても、「座屈」という現象を忘れてはならないからです。
簡単に言えば、座屈は細い部材に対して発生します。
しかも、部材の持つ強度に関係ありません。関係するのは、部材の細長比とヤング係数。
細長比とは部材の長さと断面二次半径の比率です。
細長比が大きい部材は、細長い部材です。逆は短くて太い部材。
座屈させないためには、あまり細長い部材を使ってはいけません。